安心のための行動ポイント


「自分の心を静めたい」「まわりにいる子供を安心させたい」と願う方へ

阪神淡路大震災の時に被災地で活躍された前川あさみさん(臨床発達心理士)が
書いてくださった安心のためのいくつかのポイントをお伝えします。

前川 あさみ さん(臨床発達心理士 臨床心理士)のHP
http://homepage3.nifty.com/mayekawa/asami/

1.子供の周りの大人たちへ
2.大人たちへ


1.子供の周りの大人たちへ
まず子どもたちを安心させよう。そのために】


1.「今」は安全であること、ひとりぼっちでないこと、事態は変化しようとしていることを伝えて
 あげてください。

2.子どもからの質問には、面倒がらずに耳を傾けてください。子どもの年齢なりに、
 また性格や 経験、知能に応じて様々な疑問があります。
 ときに、「どんなことも大人に質問して良い」という雰囲気をつくることが難しいことが
 あります。
 答えがわからなくなったり、大人が絶望していたりするときがそうです。分からないことは
 分からないといっても良いのです。そっとそばにいてあげて、体をなでるだけでもいいの
 です。
 「よく聞いてくれたね」と言ってあげましょう。それから、絶望しているときには、大人も
 誰かに話しかけて、不安や疑問を出してみることをまずおすすめします。
 何よりも、子どもに対して「そんなこと聞くな」「知らなくていい」という返答はしないように。
 また、繰り返し同じ質問してくることがありますが、こうやって子どもなりに不安に立ち
 向かおうとしているのです。同じ答えでいいので、淡々と答えてください。

3.いくら事実だからといって、むやみに不安をあおるような情報を提供しないよう、子どもの
 年齢や性格を考慮して、慎重に言葉や表現を選んであげてください。子どもが疑問に
 思っていないことや、聞いてきたことではないことまで、詳細に語る必要はありません。
 大人が、情報の解釈を押し付けたり、偏った情報や少ない情報で結論を急いだりしない
 ようにしましょう。しばしば、大人のほうが不安なので、このように話してしまうことがあり
 ます。大人が柔らかい心をもつことを意識しておきましょう。

4.どきどきしたり、気持ち悪くなったりといった身体症状や、怖いことばかり考えたり、怖い
 夢をみたりということがあるかもしれません。しかし、そうしたことはおかしなことではないと
 安心させてあげてください。異常な事態下での正常な反応です。大人が「おかしくなって
 しまった」と心配したり、認めまいとすると、子どもはもっと不安になります。一ヶ月を超えて
 まだ、以前の様子と違うようであれば、専門家が必ず力を貸してくれます。




【どんな気持ちも否定しないでください】


「くよくよするな」「気にするな」などと言うと、子どもは自分の気持ちをどうしたらいいかわから
なくなります。

どんな気持ちも彼らの一部です。「そんな気持ちになっても当然だよ」と答えた
後で、「でも、今、たくさんの人が、安全な状況になるために協力してくれているからね」と、
他者への感謝の気持ちを表してください。こういうときに、大人が感謝の気持ちをもっている
ことを知ると、子どもは勇気をもてます。




【できるだけ不必要な変化をしないように】


つまり日常の習慣、たとえば、夕飯前は手をあわせて「いただきます」で始めるとか、
寝る前の儀式的なものなど、できる範囲で「いつもどおり」を大事にしてあげてください。

普段使っていたり、以前に好きだった毛布やぬいぐるみなども、そばにおいておきましょう。
排泄や食事、睡眠時に赤ちゃんがえりをすることがあるかもしれませんし、前は一人でできた
ことができなくなったり、ささいなことで泣き出したりすることがあるでしょう。大人は怒ったり
せず、そのまま受け入れてあげましょう。もちろん、普段していたお手伝いも、無理のない
範囲でお願いし、できる範囲で日常習慣を継続できるようにしていきましょう。




【テレビの被災地の映像に長時間さらさないようにしてください】


こんな時期にと思われるかもしれませんが、アニメやビデオを見る機会を与えてください。
これは大人にも大切なことです。このような状況では誰もが無力感を味わいます。
そんなとき、「選択できること」というのはコントロール感を少しだけ取り戻せます。
「この番組しか見ない」、「今はこれを見なさい」などと決め付けないように。




【大人自身が自分を大切にすることです】


こうした災害によって心が傷つくことがありますが、全員がPTSD になるわけでは
ありません。
傷ついても、人間に備わっている回復力によって、心の傷を乗り越えることはできます。

その力を発揮できるようにするためにも、大人のほうも自分のことを大切にすることを意識
してください。前述したように、大人も違う番組をみたり、テレビをしばらく切ったりするように
します。不安は興奮状態をひきおこし、一見、「自分は元気」「むしろふだんより何かやれ
そう」などと思うものですが、心はとても疲れています。時間を見つけて、少しでも横になる
ようにしましょう。


子供への対応に関してさらに詳しい情報が必要な方はこちらをご参照ください。
ほんの森のHP
http://www.honnomori.co.jp/maekawa_siryu3.pdf



2.大人たちへ

こうした自然災害を乗り越えるのは、長い過程です。
自分自身に対して、以下のことを大切に。

【不安はしばしば、生理的にも心理的にも軽い興奮状態を引き起こします】

これによって、不必要に感情があふれだしたり、いらいらしやすくなったりします。一見、
いつもよりも動けそうに思えて動いてしまうことで、知らぬうちに身体的な疲労が蓄積
したりします。今はそんな自分に「落ち着こう」と声をかけてください。自分を守るために
大切なことです。自分をこうして守ることが、周りにいる人も安心させます。




【テレビの映像はあまり長時間続けて見ないことをおすすめします】

インターネットの文字情報やラジオの声からの情報に切り替えるように意識してください。
目からの情報は、思いもよらない衝撃を心に与えます。

特に子どもには気をつけてあげてください。こういう時期にアニメや映画を見るなんて、
と思われるかもしれませんが、時々はそういうものをみることを許してあげてください。
もちろん、情報は必要です。映像なしで情報を得るか、短時間でやめて横になったり、
別の作業をしたりしてみましょう。




【こういうときは、まるで「自分は大したことができていない」、「全く価値がないかのように
感じる」と
いうことがよくあります】

不安はごまかさなくて良いのです。大人だって不安になります。不安は悪い感情では
ありません。この感情があるから、人間は慎重になれるし、周りを観察しようとしますし、
情報を得ようとします。自分を守ろうとするときに大事な感情です。

不安な人が人の役に立たないということはありません。他者と痛みを共有し、一緒に
立ち上がり、支えあうことを実現する大事な感情なのだということを、忘れないでください。




【こういう時こそ、「やわらかい心を意識してもつ」ことです】

極端な情報の解釈を人に押しつけたり、偏った情報から「こうなんだ」と結論を急いだりしない
ようにしましょう。こういうときには、ストレスからささいなことで人や状況に腹がたつこともある
かもしれませんが、今、悪者や敵を作らないように意識してください。協力しあう仲間がいる
ことを理解し、多々不手際や不便なことがあっても、「限界のある中で頑張っている」という
思いで、他者への感謝を忘れないように心がけましょう。